理学療法士の管理職とは?仕事内容から年収、キャリアアップの秘訣まで徹底解説

理学療法士としてのキャリアを重ねる中で、「管理職」という選択肢に興味を持つ方もいるのではないでしょうか。臨床現場で培った経験や知識を活かし、チームや組織全体に貢献できる管理職は、大きなやりがいと共に新たな挑戦をもたらしてくれます。
「どんな仕事をしているのか」
「どうすれば管理職になれるのか」
「年収はどの程度なのか」
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
この記事では、理学療法士の管理職について、その役割、仕事内容、必要なスキル、キャリアパス、年収事情、そして管理職として成功するための秘訣まで、詳しく解説していきます。

15年の経験のうち、10年以上を管理職として仕事をしています。この経験も参考に、お伝えしていこうと思います。
目次
理学療法士における「管理職」の役割と責任

理学療法士の管理職は、単に経験年数が長いだけでなく、組織運営やチームマネジメントにおいて重要な役割を担います。
管理職の定義:一般的な理学療法士との違い
一般的な理学療法士が、患者さん一人ひとりに対して直接的なリハビリテーションを提供することを主な業務とするのに対し、管理職はより広い視点から部門全体の運営や目標達成に責任を持ちます。
患者さんへの直接的な関わりは減る場合もありますが、その代わりに、質の高いリハビリテーションサービスを提供できる体制づくり、スタッフが働きやすい環境の整備、そして組織全体の発展に貢献することが求められます。つまり、「個」へのアプローチから「組織」へのアプローチへと役割がシフトするのが大きな違いです。

管理職になる前から、全体が良くなる方法は何かないかなと考えていました。
❌管理職になってから、「組織」へのアプローチをする
⭕️「組織」へのアプローチも考えていたから、管理職になる
管理職を目指す人は広い視野が大切です!
チームを導くリーダーシップとマネジメント業務
管理職には、リーダーシップとマネジメントの両方の能力が不可欠です。
マネジメントの勉強記事はこちら
- リーダーシップ: チームの目標やビジョンを示し、スタッフのモチベーションを高め、同じ方向へ導いていく力です。スタッフの自主性を尊重し、潜在能力を引き出すこともリーダーの重要な役割です。
- マネジメント: 設定された目標を達成するために、具体的な計画を立て、リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率的に配分し、進捗を管理・評価する能力です。問題発生時には迅速かつ的確な対応も求められます。
これら二つの能力をバランス良く発揮することで、チームのパフォーマンスを最大限に高めることができます。

リーダーシップとマネジメントは重要です。
でも、すぐに身につくものではありません。
- 主体的に考えて行動する
- 行動した内容を振り返る
- 失敗したことを考える
- 人に相談したり、本を読んで勉強する
- また、行動する
この繰り返しでした。(今でも)
具体的な仕事内容:スタッフ育成、業務改善、部門運営など

管理職の具体的な仕事内容は多岐にわたりますが、主に以下のような業務が挙げられます。
- スタッフの採用・育成・評価:
- 新規スタッフの採用活動
- 研修プログラムの企画・実施
- OJT(On-the-Job Training)による指導
- 定期的な面談やフィードバックによるキャリア支援
- 人事評価の実施
- 業務改善・品質管理:
- リハビリテーション計画や実施プロセスの見直し
- 新しい治療技術や知識の導入推進
- 業務効率化のためのシステム導入や運用
- 医療安全管理、感染対策の徹底
- 患者満足度向上のための施策立案・実行
- 部門運営・経営管理:
- 部門の年間目標・事業計画の策定
- 予算作成・管理
- 診療報酬改定への対応
- 他部署や外部機関との連携・調整(医師、看護師、ソーシャルワーカー、地域のケアマネージャーなど)
- 会議の運営、資料作成、報告業務
- 労務管理(シフト作成、勤怠管理、休暇調整など)
- コンプライアンス遵守:
- 関連法規やガイドラインの遵守徹底
- 個人情報保護の管理
施設形態(病院、クリニック、介護施設等)による役割の違い
理学療法士が働く施設形態によって、管理職の役割や業務の重点は多少異なります。
- 病院(急性期・回復期・慢性期):
- 多職種チーム医療におけるリハビリテーション部門の専門性の発揮と連携強化。
- 入院患者さんの早期離床、機能回復、在宅復帰支援のための計画立案と実行。
- DPC(診断群分類包括評価)やクリニカルパスの管理、効率的なベッドコントロールへの関与。
- 大規模な組織の場合、リハビリテーション部門内のチーム(例:脳血管、運動器、呼吸器など)を統括する役割も。
- クリニック(診療所):
- 外来患者さんを中心としたリハビリテーションサービスの提供と、地域におけるかかりつけ機能の強化。
- 比較的少人数のスタッフをまとめるため、よりプレイングマネージャーとしての役割が濃くなることも。
- 集患やクリニックの評判向上に繋がるような取り組みも求められる場合があります。
- 介護施設(老人保健施設、デイケア、訪問リハビリ等):
- 利用者さんの生活機能維持・向上、QOL(生活の質)向上を目的としたリハビリテーション計画と実践。
- 介護スタッフとの密な連携、家族への指導や相談対応。
- 介護保険制度下でのサービス提供と運営管理。
- 地域包括ケアシステムにおける役割の遂行。
どの施設形態であっても、質の高いサービス提供と効率的な部門運営、そしてスタッフの成長を支援するという管理職の基本的な役割は共通しています。
デイケア中間管理職の仕事の実際
わたしの場合、利用者の担当も持っていますが、多くの時間は運営業務に当たっています。内容としたら
- ケアマネージャーとの連携申し込みの相談
- 業務効率化のための仕組み化・仕事の分担を検討
- 関係部署との会議・調整
- 理念・目標に応じた方針の設定
- スタッフの勤怠管理
- トラブル発生時の対応・指示出し
ルーチンワークをこなす中で、突発的な対応をすることが多いためです。

管理職になってから勉強してよかったことは
EXCELの使い方です!
昔は、ただの書類作成のファイルとして使っていました。
今ではVBAでマクロを組んで、記録・集計業務の自動化ができています。
さらに、AIの進化によって様々なことが、より効率的に行えています。
まだ、使ったことがない方はぜひ使ってください!

理学療法士が管理職になるには?必要なステップとスキル

管理職を目指すには、計画的なキャリア形成とスキルの習得が重要です。

何より、「組織」貢献するにはどのようなことをしたら良いか?を考えて行動できることが大切です。
「自分が患者さんの為に頑張りたい」
「良いチームの取り組みで、患者さんに貢献したい」
ちょっと硬い表現ですが、こんな考え方でした。
管理職を目指す考え方はこちらの記事にもまとめています。
管理職へのキャリアパス:一般的な道のりと期間
理学療法士が管理職に至るキャリアパスは、所属する組織の規模や方針によって異なりますが、一般的には以下のようなステップが考えられます。
- 臨床経験の蓄積(スタッフ): まずは一人の理学療法士として、幅広い疾患や症例を経験し、専門性を高めます。通常3年~5年程度の臨床経験が求められることが多いです。
- チームリーダー・主任など(中間管理職): 小規模なチームのリーダーとして、後輩指導や業務の取りまとめ、部門長補佐などの役割を担います。この段階で、基本的なマネジメントスキルやリーダーシップを学び始めます。このポジションに就くには、5年~10年程度の経験が一つの目安となるでしょう。
- 課長・科長・部長など(管理職): リハビリテーション部門全体を統括する責任者として、本格的なマネジメント業務や組織運営に関わります。10年以上の臨床経験に加え、リーダーとしての実績や人間性が評価されます。
期間についてはあくまで目安であり、本人の能力や努力、組織の状況によって大きく変動します。若くして管理職に抜擢されるケースもあれば、じっくりと経験を積んでから就任するケースもあります。
必須スキル:コミュニケーション能力、問題解決能力、指導力
管理職として成果を上げるためには、以下のスキルが特に重要となります。
- コミュニケーション能力:
- スタッフの意見を傾聴し、共感する力
- 自分の考えや指示を明確に、かつ分かりやすく伝える力
- 他部署や外部関係者と円滑な関係を築く交渉力・調整力
- 部下を勇気づけ、モチベーションを高める言葉かけ
- 問題解決能力:
- 部門やチームが抱える問題を客観的に分析し、本質を見抜く力
- 創造的かつ実行可能な解決策を立案する力
- 関係者を巻き込み、協力を得ながら解決へと導く力
- 指導力(育成力):
- スタッフ一人ひとりの特性や能力を見極め、適切な指導を行う力
- 目標設定を支援し、成長を促すフィードバックを行う力
- 自ら模範を示し、チーム全体の能力向上を図る力
これらのスキルは、日々の業務の中で意識的に磨いていくことが大切です。
管理職登用を目指すための自己PR
管理職への登用を目指す際には、効果的にアピールする必要があります。

頑張っていても、気づいてもらえない事もあります。
適切なアピールは大切です。
誰に?→管理職を任命する人
いつ?→組織のことを考えて取り組むとき
どのように?→自分の考えの相談やしたいこと
この点を押さえて、話をする機会を持つことからはじめてみましょう。
こんなアピールをする人は管理職にしたくない
アピールの仕方・内容によっては逆効果になる事もあります。
- 提案内容が個人的・チームのことが考えられていない
- 時間帯を考えずに提案・相談する
- 相談の内容が抽象的すぎる
- 聞いた事に対する報告がない
理学療法士管理職のリアル:やりがいと大変さ
管理職には大きな魅力がある一方で、特有の難しさも存在します。
管理職として働くメリットと大きなやりがい
チームや組織への貢献
管理職の最大のやりがいのひとつは、自分の働きかけによってチーム全体が成長し、より質の高いリハビリテーションサービスを提供できるようになることです。スタッフの成長を間近で見守り、チームとして大きな目標を達成した時の喜びは格別です。また、部門運営を通じて病院や施設全体の発展に貢献できることも、大きな達成感に繋がります。
自己成長とキャリアの可能性拡大
管理職の業務は、臨床業務とは異なる多岐にわたるスキルを要求されます。問題解決、意思決定、交渉、人材育成など、新たな課題に取り組む中で、自身の視野が広がり、人間的にも大きく成長できます。また、管理職としての経験は、さらなるキャリアアップ(より上位の管理職、コンサルタント、教育者など)の可能性を広げてくれます。
待遇面の向上(給与など)
一般的に、管理職に就くことで役職手当などが支給され、給与水準は向上します。責任の重さに見合う経済的なリターンが得られることも、メリットの一つと言えるでしょう。
管理職が直面する課題とデメリット
責任の重さとプレッシャー
管理職は、部門全体の成果やトラブルに対して最終的な責任を負います。予算達成のプレッシャー、医療安全に関する責任、スタッフの労務管理など、常に多方面に気を配り、的確な判断を下すことが求められます。この責任の重さが、大きな精神的プレッシャーとなることもあります。
臨床業務とのバランス
管理業務が増えるにつれて、患者さんと直接関わる臨床業務の時間はどうしても減少しがちです。最新の臨床知識や技術を維持することの難しさや、臨床家としてのアイデンティティとの葛藤を感じる人もいます。プレイングマネージャーとして臨床にも関わり続けるか、マネジメントに専念するかは、職場の方針や自身のキャリアプランによって異なります。
スタッフとの人間関係の難しさ
様々な個性や価値観を持つスタッフをまとめ、時には厳しい判断や指導をしなければならないこともあります。スタッフ間のトラブルの仲裁や、モチベーションの維持、公平な評価など、人間関係の構築と維持には常に配慮が必要です。かつての同僚が部下になることで、関係性が変化することに戸惑う場合もあるでしょう。
「やらされ管理職」にならないために意識すべきこと
「やらされ管理職」とは、本人の意欲とは別に、年功序列や適任者不在といった理由で管理職に任命され、主体性を持てずに業務をこなしている状態を指します。このような状態を避け、主体的に管理職としての役割を全うするためには、以下の点を意識することが重要です。
- 自身のキャリアビジョンを明確にする: なぜ管理職を目指すのか、管理職として何を成し遂げたいのかを自問自答し、明確な目標を持つ。
- 主体的に学ぶ姿勢を持つ: 管理職に必要な知識やスキル(マネジメント、リーダーシップ、関連法規など)を積極的に学ぶ。
- 周囲に相談できる環境を作る: 上司や同僚、他施設の管理職など、気軽に相談できるメンターや仲間を見つける。
- 小さな成功体験を積み重ねる: 最初から完璧を目指さず、一つ一つの課題に取り組み、成功体験を積み重ねることで自信に繋げる。
- 自身の強みを活かす: 自分らしいリーダーシップのスタイルを見つけ、強みを活かしてチームに貢献する。
気になる理学療法士管理職の年収・給与事情

管理職を目指す上で、年収や給与事情は重要な関心事の一つです。
管理職の平均年収と給与レンジ
理学療法士の管理職の年収は、役職、経験年数、勤務先の規模や種類(病院、クリニック、介護施設など)、地域などによって大きく異なります。
一般的に、チームリーダーや主任クラスで年収450万円~600万円程度、課長・科長クラス以上になると年収550万円~700万円以上といった声も聞かれますが、これはあくまで目安です。大病院の部長クラスや、複数の施設を統括するような立場になれば、それ以上の年収も期待できる場合があります。
正確な情報を得るためには、転職サイトの求人情報を参考にしたり、キャリアアドバイザーに相談したりするのが良いでしょう。
理学療法士の年収関連の記事もあります。こちらもチェックしてみてください。

年収アップのポイントと交渉術
管理職として年収をアップさせるためには、以下の点がポイントとなります。
- 実績を出す: 部門の業績向上、業務改善によるコスト削減、スタッフの離職率低下など、具体的な成果を示すことが重要です。
- 専門性を高める: 認定理学療法士や専門理学療法士の資格取得、経営に関する知識(MBAなど)の習得は、自身の市場価値を高めます。
- マネジメント能力を磨く: スタッフ育成やチームビルディングで高い評価を得ることも重要です。
- 交渉の準備: 昇進や転職の際には、自身の成果や市場価値を客観的なデータに基づいて提示し、希望する給与額を具体的に伝える準備が必要です。
役職や経験年数による給与の違い
一般的に、役職が上がるほど、また経験年数が増えるほど給与は高くなる傾向にあります。多くの組織では、役職に応じた手当(役職手当、管理職手当など)が支給されます。
経験年数に関しては、単に長く勤めているだけでなく、その間にどのような実績を上げ、スキルを身につけてきたかが評価の対象となります。
管理職に向いている理学療法士の特徴とは?
どのような人が理学療法士の管理職に向いているのでしょうか。いくつかの特徴が挙げられます。
リーダーシップを発揮できる人
- 明確なビジョンを持ち、チームを目標達成に向けて導くことができる。
- 周囲を巻き込み、協調性を引き出す力がある。
- 困難な状況でも冷静さを保ち、決断力がある。
- 他者の意見に耳を傾け、公正な判断ができる。
高いコミュニケーション能力を持つ人
- 相手に分かりやすく、かつ的確に情報を伝えることができる。
- 傾聴力があり、相手の意図や感情を正確に理解できる。
- 異なる意見を持つ人とも建設的な対話ができる。
- 部下を褒め、励まし、モチベーションを高めることができる。
広い視野と課題解決能力がある人
- 目の前の事象だけでなく、組織全体や業界の動向など、広い視野で物事を捉えることができる。
- 問題の本質を見抜き、多角的な視点から解決策を模索できる。
- 変化を恐れず、新しいことにも積極的にチャレンジできる。
- データや情報を基に論理的に思考し、判断できる。
自己管理能力とストレス耐性がある人
- 自身の業務や時間を効率的に管理できる。
- 感情をコントロールし、プレッシャーの中でも冷静に対応できる。
- オンとオフの切り替えが上手く、心身の健康を維持できる。
- 失敗から学び、次に活かすことができる。
これらの特徴は、必ずしも生まれ持った才能だけでなく、意識して努力することで後天的に身につけていくことも可能です。
先輩管理職からのアドバイス:成功する管理職になるために
最後に、実際に管理職として上司や先輩からいただいたアドバイスを一部まとめています。
成功事例や体験談から学ぶ
身近な先輩管理職や、書籍、セミナーなどで紹介される成功事例・体験談は、管理職としての心構えや具体的なノウハウを学ぶ上で非常に参考になります。どのような困難をどう乗り越えたのか、どのような工夫をしているのかを知ることで、自身の活動に活かせるヒントが得られるでしょう。
常に学び続ける姿勢の重要性
医療や介護の分野は常に進化しており、マネジメントの手法も時代と共に変化します。現状に満足せず、新しい知識やスキルを積極的に学び続ける姿勢が不可欠です。研修会への参加、専門書の購読、異業種交流などを通じて、自身の視野を広げ、能力を高めていく努力が求められます。
ワークライフバランスを保つ秘訣
管理職は責任も重く、多忙になりがちですが、心身の健康を維持し、長期的に活躍するためにはワークライフバランスが重要です。
- 業務の優先順位付けと効率化: 何が本当に重要かを見極め、効率的に業務を進める工夫をする。
- 部下への権限委譲: 全てを自分で抱え込まず、適切に部下に仕事を任せる。
- 休息をしっかりとる: 質の高い睡眠、趣味やリフレッシュの時間を確保する。
- 相談できる相手を持つ: 悩みやストレスを一人で抱え込まず、信頼できる人に相談する。
自分に合った方法で心身のバランスを保ち、仕事へのエネルギーを維持することが、成功する管理職の秘訣の一つです。
まとめ:理学療法士としてのキャリアを広げる管理職という選択肢

理学療法士の管理職は、臨床とは異なる視点から組織やチームに貢献し、大きなやりがいと自己成長を得られる魅力的なキャリアパスの一つです。仕事内容は多岐にわたり、責任も伴いますが、その分、達成感も大きく、自身の可能性を大きく広げることができます。
管理職を目指すには、計画的なスキルアップと経験の積み重ねが不可欠です。この記事で紹介した内容が、あなたのキャリアプランを考える上での一助となれば幸いです。
もしあなたがチームをより良くしたい、組織に貢献したいという想いを持っているなら、管理職という道も視野に入れてみてはいかがでしょうか。